荒井呉服店別誂え:加賀友禅作家〜高田克也 作〜訪問着 -『浅黄水仙』

お子様の初宮詣り、七五三詣り、入卒式、または知人友人ご親戚の結婚式。

20代から30代、40代... 訪問着という礼装の着物を着る機会は様々ございます。

 

時には控えめに、時には華やかに、様々ある慶事の席を相応しい装いで彩るという事は、人生の節目を家族や親しい仲間との大切な思い出として彩る事でございます。

今回、荒井呉服店ではそんな慶事に相応しい装いを、と加賀友禅作家 - 高田克也氏に訪問着の制作を依頼。氏の独自の感性で表現される加賀友禅「慶事の美」をどうぞご覧ください。

 

加賀友禅作家 - 高田克也 作 - 訪問着 作名『浅黄水仙』

価格:778,000円 *仕立て代込み

 

加賀友禅の産地である石川県が独自に開発したフリージア『エアリーフローラ』を柄として描いた本作。

花言葉は「希望」。キャッチフレーズは「旅立ちを祝う花」とされており、見た目の美しさはもちろんの事、込められた想いも慶事の席にこれ以上ない程の相応しさ。永くお召し頂ける様にと熟考した地色柄色。

着物は着姿の美しさが最も重要となりますので、構図にも十二分の考えを巡らせて制作に取り掛かって頂きました。

 

 

<本作の小下絵>

 

今回の制作にあたっては幾つかのテーマがあった為に小下絵を制作頂きました。作家さんに制作を依頼する際はメインとなる柄(上前など)と地色を指定しその他はお任せにする場合がほとんどですが、今回は幾度かディスカッションを重ねて彩色や柄構図、そして着姿に至るまで出来る限り内容を詰めて実物の制作に取り掛かって頂きました。

 

<上前から背中心にかけて>

 

刺繍や金彩を用いずに彩色のみで仕上げるのが加賀友禅の特徴。この彩り表現が京友禅との違いの一つであり加賀友禅特有の「奥ゆかしさ」が表われる所以でもあります。彩色のみで表現される「華やかさ」には様々な工夫が為されています。

 

<生地の質感と柄の彩色の調和>

 

生地は滋賀県長浜で織り上げられた変わり一越縮緬。

縮緬と言っても様々ございますが、変わり一越縮緬はシボが最も細やかで見た目も品良く美しく、加賀友禅のような色彩柄描写の染物には最も適している生地。本作に使用しているのはそんな一越縮緬の中でも最上級品に位置付けられる「七々美」でございます。

 

<細やかな彩色>

<訪問着全体を包む豊かな彩り>

<作家の感性が際立つ色彩感覚>

 

柄はもちろん地色を映させる彩色は作家の感性が際立つポイント。本作の制作にあたっては彩色は概ね作家の感性に委ねさせて頂きましたが、こちらの想像もつかない美しい色彩で仕上げて頂きました。地色と彩色が互いに引き立て合い、そして着物全体を美しく彩る素晴らしい仕上がり。

 

 

<八掛には表地からのストーリーを表す模様>

<構図に伸びやかさが加わる巧妙な図案>

<熟練の職人が手掛けた「糊置き」が活きた仕上がり>

 

<加賀友禅の工程の一つ:糊置き>

 

<描く様に糊を置く。筒を進める手の勢いにより柄にも活きた動きが宿る>

筒から絞り出される糊の量で輪郭の太さが変わる

 

「糊置き」は「糸目糊置き」とも呼ばれている工程。青花で描いた下絵に沿って褐色の防染糊を着ける(置く)作業ですが、置いた糊は柄の輪郭となりますので、柄の表情や印象はこの工程によって大きく左右されます。


・・・

 

京都の公家文化の影響を多大に受け育まれた雅な「京友禅」。

前田家加賀藩の武家文化に培われた「加賀友禅」。

共に宮崎友禅斎を源流とする染色技法ですが、土地風土と文化を背景にその作風は大きく異なります。

 

・・・

 

加賀友禅作家:高田克也 氏

 

<高田克也 略歴>

 

鶴見保次に師事

 

平成22年 独立

平成24年 第38回加賀友禅新作協議会 中部経済産業局長賞

平成26年 第40回加賀友禅新作協議会 金沢商工会頭賞

平成28年 第42回加賀友禅新作協議会 金沢市長賞

平成29年 伝統工芸士認定

平成29年 第43回加賀友禅新作協議会 石川県伝統産業振興協議会会長賞

平成30年 第44回加賀友禅新作協議会 石川県知事賞

令和元年 第45回加賀友禅新作協議会 石川県伝統産業振興協議会会長賞

令和2年 第46回加賀友禅新作協議会 伝統工芸品産業振興協会賞

 

 

Photo&Text Ryusuke Ishige
ブログに戻る